■第5回「特撮暗黒時代」その2「ビデオが我が家へやってきた」その@
 ビデオというものがこの世にあることを知ったのは、明瀬が中学生だった頃の話です。

友達の家にそれがあることを知った明瀬は、図々しいことに自分でテープを買って乱入したのです。
当時、彼の家にあったのはβ(ベータ)でした。今や、一般家庭からは消え失せてしまったであろうと思われる、マニアご用達フォーマットの初期型。それでもβが使えたから、当時としては最新型でありました。

「録画してあげるからテープ買っておいでよ」と言われ、買ったテープはL750です。SONY純正の奴ですが、当時これが4000円もしたのです。今ならビデオソフトが買えてしまいますが、生テープですらそんな法外な(失礼)値段の時代。当時のおこづかいの実に2か月分です。

でも、これがβで3時間しか収録できないのです。それなのに何故このテープを買ったのか…。それは「宇宙からのメッセージ」(劇場版)のTV放送が、この富山であったからなのです。

劇場では「惑星大戦争」(一日中映画館で見たので多分3回は見た)を見に行ってしまった明瀬は、「宇宙からのメッセージ」は遂に見に行けずじまい。また、当時はレンタルビデオ屋さんなど無かった時代。これを逃がしたらもう二度と見れないと思ったものでした。

そんな訳で、目を皿のようにして観て、なおかつカセットテープをセットして、あまつさえ、友達の家のビデオで録画!。オタク少年ここにありというパーフェクトな状態で放送を迎えたのでした。今から考えればこんなことに血道をあけずに彼女の一人でも作っていれば、後の人生変わったかもしれませんが…。

当時の明瀬は硬派だったので、もうこんなことにしかお金の使い道が考えられなかった訳で、と同時に、前回でも書いたように慢性的に特撮飢餓状態にあった明瀬は、もうなりふり構わずだったのです。
そして、其のテープに録画したものを見るために3日と空けずに友達の家へ伺い、これでもか!ってくらいに見たおしたのです。

家へ帰ればカセットで聞き…、ああ、特撮バカです。後年、平山先生に案内されて東映大泉撮影所に行った時、ひときわでかいミニチュアを発見。友達の誰もが忘れていたのに一人だけ「宇宙からのメッセージ」のミニチュアであることを看破したのもこの時の見倒しかたがあったから。ちなみに冒頭近くに登場する連絡船のミニチュアでした。全長1m50cmはあったと記憶しています。素材は木製でした。

何でも見ておくのはいいもんだと一人ほくそえむ明瀬でありましたが、 今思えば300円も出せばビデオソフトをいつでも借りられる世の中はあの頃に比べたらどんなにか幸せなことでしょう。

ちなみに、そのビデオテープはその後別の作品を録画して今も実家に存在しています。消しては使い、消しては使い。一本のビデオテープの有り難みが随分とあった時代のお話でした。